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日本認知症ケア学会 札幌大会 参加報告。

2015.6.4

【 大会テーマ: 認知症の人の食べる喜びを拓く ケアの知 

5月23日からの2日間にわたって
サッポロ芸文館並びに札幌市教育文化会館にて
開催された第16回 日本認知症ケア学会 札幌大会へ
ライフケアグループから5名が会場に赴き
参加してきました。

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大会長講演
認知症の人の食べる喜びを拓くケアの知
北海道医療大学看護福祉学部  山田 律子 氏

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山田 律子 氏

北海道医療大学看護福祉学部 教授

東京大学大学院医学系研究科 修士課程 修了
北海道医療大学大学院看護福祉学研究科博士課程 修了
認知症高齢者の摂食困難と援助方法に関する研究

ベストを尽くしたか?
本当に食べられないのですか?

認知症高齢者の食事ケアは、食事の状態の観察に始まる。
認知症の病気の特徴や食事を口に入れること、食べ物を噛むこと、
飲み込む機能についての視点、暮らしと食べ物についての関係性、
さらには排泄や睡眠と目覚めのリズムと連動する生活全体をみることが不可欠である。

場合によっては、1日3食食べられないなら、
朝夕2食+軽食にすれば、少なくとも朝夕の食事がしっかり取れる場合もある。
好物・おいしさ・食形態・スプーンテクニック・姿勢・援助に必要なケア技術など
生活の営みに対する支援を持って、あきらめないから私たちはそこに寄り添うプロである。

読売認知症ケア賞功労賞受賞講演
     これからの認知症ケアに望むこと
   医療法人きのこ会 院長  佐々木 健 氏

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佐々木 健 氏

医療法人きのこ会 院長
鹿児島大学医学部卒業。
岡山大学医学部神経精神科等を経て
80年きのこ診療所開業。
84年日本初の認知症高齢者専門病院・医療法人社団きのこ会「きのこエスポアール病院」開設
とともに院長に就任、
87年社会福祉法人新生寿会理事長に就任

できないコトに対するケアから、
できるコトをみつけるケア

認知症を医療だけで対処すると返って悪くなったというケースは稀ではない。

きっと、そこにはケアがない。

認知症は、今やごく普通の治らない病気で、そのままを受け止めて配慮するケアをごく普通の考え方として臨むのがその道のプロの意義。そのためにも試し試しチャレンジして視野を広く持つ努力を怠らない事が大事。なぜなら、認知症は関係性の病気だから。
そのためにも、スタッフの意識改革が必要であり、
殊にコミュニケーション能力が重要であると考えた。

社会で活動する事ができる身体と社会活動そのものを決して失いたくない!という気持ちを支えるケア。それが私の考える認知症ケアである。

スキルアップセミナー
       認知症の人への口腔アセスメント 
   札幌市立大学看護学部   村松 真澄 氏

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村松 真澄 氏

札幌市立大学看護学部 准教授
北海道大学医学部付属看護学校卒業。北海学園大学法学部法律学科卒業。
北海道大学大学院歯学研究科口腔健康講座高齢者歯科学博士課程修了。

地域連携できる口腔アセスメントと標準口腔ケアプランに関する研究

食べられない人ほど、口腔ケアの回数を増やすべきである。

認知症を呈する人は、自分の身体に起きていることが説明できないので、
虫歯や歯周病の発見が遅れ、認知障害で歯科治療が困難になり放置されてることもある。
専門職が、口腔アセスメントをし、口腔ケアの実施で歯科口腔疾患を予防・早期発見する
ことが大切である。


日常生活において口を使い、食べて、呼吸をして、しゃべるなど、普通にできる
口腔であるように口腔ケアで支援したいと考えている。

 

スキルアップセミナー
  口腔機能を引き出すスプーンテクニック 
  ナーシングホーム気の里  田中 靖代 氏

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田中 靖代 氏

ナーシングホーム 気の里 代表

豊橋市立看護専門学校卒業後、豊橋市民病院入職。
脳血管障害による摂食嚥下障害患者に出会い積極的に摂食訓練を行った。
食べられなかった患者が食べられるようになる歓びが、こだわりの看護となった。

浜松医科大学院(地域看護学)修士課程修了。

経管チューブで栄養を摂っていても、実は誤嚥性肺炎にならないわけではない。

唾液は、1日1リットルから1.5リットル常に出続けて、絶食していても、私たちはそれを飲み続けている。

飲み込みのあとに鼻から鼻水のようなものがでてしまう状態、
これを鼻咽空閉鎖機能不全というが飲み込みの悪い人の食事の時によく見受けられる。
うまくこれらの障害の特性と口腔機能をしっかり理解して、口から食べることの支援を行えば、
これによって食べられるようになった患者は、途端に元気になり、
生活行動が拡大することも目にしてきた。

これらを見ても「食べること」の意義は大きいといえる。

誤嚥なく美味しく口から食べてもらうために配慮を加えるのが暮らしを支える
仕事のひとつであることを自覚してほしい。

モーニングセミナー
  認知症の人の急変を見抜くための観察ポイント
  藤田保健衛生大学 救急総合内科  岩田 充永 氏

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岩田 充永 氏

藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授
名古屋市立大学卒業 日本内科学会総合内科専門医
日本救急医学会救急科専門医 名古屋市立大学病院麻酔科
名古屋大学病院老年科にて研修。
協立総合病院、名古屋掖済会病院救命救急センターで
ER型救急医として勤務し現職。

認知症患者が、何か重い病気になっても症状がなかなか見つけられません。

特に要介護高齢者では、普段の体温と心拍数を把握しておくことが重要で、
発熱が軽度であっても心拍数/体温>20の場合は細菌感染の可能性が高くなる。

呼吸数は、体に重大な異変が発生すると早くから異常を示す。30から60秒かけて測定する。
呼吸数20回/分以上、あるいは8回/分未満を以上と判断する。

また、呼吸数増加+言動異常はショック状態を疑う。

とにかく専門職として、認知症患者の急変の前触れを察知するための観察を
普段から取り組んで把握をしておくことが、緊急時に備えることにつながる。

シンポジウム
  認知症の人の摂食嚥下障害の特徴とケア
 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能治療学教室  野原 幹司 氏

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野原 幹司 氏

大阪大学歯学研究科顎口腔機能治療学教室

准教授

大阪大学 歯学部  卒業

大阪大学 歯学研究科 臨床系専攻 修了

認知症の摂食・嚥下リハビリテーションの確立 (社会系歯学)の研究

これまでの摂食嚥下リハビリは、脳卒中の患者のリハビリとして行われてきた。

反して概ね悪化傾向にある認知症患者においては、機能低下を防いだり、
今ある機能を生かして生活の質を改善することに重点が置かれている。

在宅や施設で暮らす認知症の利用者にとって「食べることは生きること」であり、
「口から食べる」という行為は、最後まで残る自発動作になることも多く、
「家族が作った物を口から食べる」ということは、
最後まで残るコミュニケーションそのものである。

その人生の最後を迎えた認知症の利用者の「食べる」という行為を
「医者の安心のため」という怠慢や知識不足で奪ってはならない。

むしろ私は誤嚥性肺炎ではなく、
自然に唾液が気管の中に流れてしまうことによる不顕性誤嚥の方が怖い。

嚥下難民といわれる認知症を呈した方々の「食」に
少しでも彩りが添えられることを望んでいる。


殊に、今回の日本認知症ケア学会大会は、
認知症の進行の先にある嚥下困難という障害を
受け止め、懸命に向かい合う実践者の皆さんの
状況に対する捉え方であったり、諦めない姿勢に
共感を感じる良き学びの機会になりました。

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編:福祉事業本部

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